今回から審査方法が変更され、それぞれの委員が事前にDVD資料を見て臨んだ審査会。1本ずつCMを確認する進行は従来と同じながら、「注意」「話題」という分類ではなく、「適正」か「不適正」かを採決する形になりました。
いわば、白か黒かをよりはっきりさせねばならないわけですが、今まで以上に活発な議論が展開され、さまざまなことを考える良い機会となったと思います。以前なら「NGワード」として即「注意」とされたものも、その広告全体の文脈の中で一から考えようということで、時代による語感の変化などにも、柔軟に対応していける気がします。
「不適正」となったものは、テレビが3商品でした。中で、私が特に気になったのは目薬です。片や饒舌、片や説明不足と、くしくも両極端なCMが並びました。
まず、「吸着性ビタミンAを最大限配合した眼科用薬」という表現。家で見たときから、「眼科用薬」という言葉にひっかかりました。従来の目薬と異なるスイッチOTC医薬品で、強力な新薬かと思ったのです。他の委員にも同様の印象を持った方が多かったようで、「医師が使う薬であって、OTC薬でないように感じる」といった感想が頻出しました。一方、製薬メーカーからは、「目薬=眼科用薬であり、それほど違和感がない」という言葉も。一般消費者と製薬メーカーの認識に、ずいぶん開きがあると実感させられたことでした。一つの商品で11本の生CMを展開しており、1本ずつ微妙に言い回しを変えているため、採決では「適正」とされたものが7本、「不適正」とされたものが4本でしたが、その多くが「他の目薬とは違う、よく効く眼科用薬」という文脈で語られるため、視聴者が誤誘導されやすいという点は共通しており、個人的には、こういったCM展開の方法そのものを見直してほしいと感じています。
もう一方は、「瞳は年齢を語る。エイジイングに着目した目薬」というキャッチコピーがナレーションに合わせて画面に踊る以外、効能効果などは極小文字で申し訳程度に画面の片隅に置かれるCM。
エイジイングに着目と言われても、目のエイジイングが何を意味するのか、何に効くのか、視聴者にはさっぱりわからないばかりか、CM全体が化粧品的で医薬品とは思えない、と厳しい意見が相次ぎました。ボトルをおしゃれにする、そのこと自体は、私は良いと思います。しかし、それにつられて(?)、CM自体も、雰囲気重視の、必要な情報を何も伝えないものにしてしまうのは、医薬品メーカーの責任を放棄するようなものと言えるのではないでしょうか。
先般、一般用医薬品のインターネット販売を解禁する改正薬事法が可決されました。市販薬の99.8パーセントがインターネットで購入可能になるということで、必要な人に最適な薬が短時間で届けられるという利便性や、購入履歴の管理など、メリットを歓迎する声も多い半面、リスクへの懸念など、
さまざまな立場からの意見が報道されています。
そのような中、私たち消費者としては、「選ぶ」目を磨いていくことが必要になってくるわけで、
そのための正しい情報を得る手段として、広告はしっかりその役目を果たしてほしいと思うのです。
テレビで印象に残った薬を、インターネットで検索して購入する—今後は、そういうパターンも増えていくでしょう。今回、「不適正」とされたHP広告がありましたが、生命にかかわる情報を正しく伝えていくという医薬品広告の原点に、今一度立ち返る時期が来ているのではないかと思います。
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