日本一般用医薬品連合会 - 一般用医薬品業界の連携を強化し、様々な課題について取り組みを進めます。

　風邪のハイシーズンにして花粉症のはしりともいうべき11月から1月にかけて収録・掲載された117素材が審査対象になった第231回は、素材も多ければ〈注意〉〈話題〉も多い、なんとなく荒れた印象の回となりました。
　もちろん審査会自体は穏やかに進んだのですが、その「荒れた」感じを突き詰めると、毎度のことながら、「医薬品なのに、これでいいのだろうか」という違和感に行き当たるような気がします。

①　飲みさえすれば？
　胃腸の調子がよくないと言いながら、薬を飲めば大丈夫とばかりに、デザートや脂っこい食事をぱくついている胃腸薬のＣＭ、便秘なのになにも対策をとっていないのは大問題と指摘したあとで、食生活や運動についてまったく言及することなく薬を使うよう誘導する便秘薬のＣＭ。どちらも〈話題〉ではありますが、〈注意〉ではないからと軽く考えていただきたくないというのが個人的な意見です。胃もたれや便秘というのは、生活習慣が大きく影響する類の症状ですし、３月にはスイッチＯＴＣのメタボ対策市販薬が医師会の意見を入れて条件付きの販売になったと報じられたニュースもあり、専門家たる医薬品メーカーは消費者を啓蒙してこそ、と願うのですが、いかがでしょうか。

②　すぐ効く？
〈注意〉となった「飲むとすぐに溶け出し、腰痛を治します」は言うに及ばず、「速効」的な表現が過剰になっているものが多いように見受けられました。解熱鎮痛剤は、ある程度の速効表現が許容されているとはいえ、ぼんやり見ているだけだと１時間とかからず効きそうなイメージが残るものがほとんどです。中には、本当にそのくらいで効果が出るものもあるのかもしれませんが、一般消費者にとってその“玉石混交”を見分けるのは至難の業ですから、誤認させるようなやり方は気になります。
　また、同一商品、同一メーカーでないにしても、審査会のたびに似たような〈注意〉が繰り返されるのは非常に残念なことです。

③　安いからどうぞ？
　今回、特にさまざまな指摘が集中したものが、２素材ありました。
　かたや腰痛のテレビＣＭ、かたやしみ・そばかすの新聞広告、と分野はまったく違いますが、どちらも「医薬品らしさに欠ける」という意味では似ていたと言えます。「希望小売価格値下げ」「1ヶ月分１箱が初回値下げ」と、まるでバーゲンセールのような表示は「医薬品の品位を損なう恐れがあり、濫用助長にもつながる」ということで〈話題〉になりましたが、こういう乱暴とも言える広告が、ＯＴＣ医薬品全体への信頼感に少しでも影響を与えるとしたら、これもまた非常に残念なことと言わざるを得ません。

　折しも、反対の声も多い中、日本のＴＰＰ交渉参加が決定しました。
　ＴＰＰの是非はさておき、いずれ医療分野にも適用されて混合診療解禁というような事態になる可能性も出てきたわけですし、そうでなくても医療費抑制が国の課題である以上、今後、ＯＴＣ医薬品の果たす役割は、さらに大きくなっていくでしょう。
　となれば、消費者の側も自分の症状に合った薬を選択する知恵が必要になるのはもちろんですが、それを手助けする医薬品広告は、重要な使命を担っていると思うのです。今回見た中で、皮膚科を受診したほうがいい場合にも言及し、ＯＴＣ医薬品の使用法から効能効果までをしっかり説明した皮膚用軟膏の30秒ＣＭが印象に残りましたが、こういう視点からの広告が増えていくことも一つの解決法にはなるのでは、と感じています。

以上