今回の広告審査会は、OTC医薬品協会の事務所が移転してから初の審査会となりました。道に迷いながらもたどり着いた真新しい事務所への移転は、セルフメディケーションの推進が新たな局面を迎えているこの時期に相応しいようにも感じました。生活習慣病薬のスイッチ化を巡る昨今の情勢を悲観的に受け止めている方もおられますが、私はむしろ、ここでちょっと立ち止まって足元を踏み固め、次の一歩を着実に踏み出すことが、長い目で見れば我が国の医療やOTC薬業界の将来には有益だと考えています。
さて、今回の審査会で検討されたことの中から、二つの事例を取り上げて見解を述べたいと思います。
一例目は、「プロ」という表現の可否についてです。外用薬のテレビCMにおける「~にプロの力を」というナレーションの妥当性について検討されたのですが、当該製品の品名の一部に「プロ」の字句が入っていること、テレビ映像では正確な品名による表記がなされていることなども総合的に考慮して、生活者に誤認を与えるおそれは少ないだろうという判断から、当該広告に関しては特に問題としないことになりました。
ただし、「プロ」という表現は、常識的には「プロフェッショナル」の略語と受け止められます。「プロフェッショナル」とは、ご承知のとおり、「専門的、職業的」という意味です。したがって、いくつかある効能・効果から特定のものを取り出して、「~(特定の効能)のプロ」というような表現をした場合には、その効能に対する専門薬であるかの如き誤認を与えることになり、基準3(1)の専門薬的表現の禁止に抵触するおそれがありますので、注意していただきたいと思います。
二例目は、テレビCMのナレーションで「明日の朝刊で効果データをご覧ください。」と予告し、翌日の新聞紙上で臨床試験データの詳細を掲載するスタイルの広告についてです。この形の広告については、広告基準上問題のないことはもちろんのこと、臨床データなどの存在をテレビCMで取り扱う場合には、むしろ望ましい方法と考えられます。
なぜならば、テレビの映像に生の試験データを映し出しても、視聴者にとっては、時間的にも視覚的にも、その内容を正確に把握することはほとんど不可能だからです。仮にそのようなテレビ広告をしたら、それは生活者に誤認を与えるだけのことでしかありません。さらに言えば、「効果を示す試験データがあります。」とだけCMで紹介するのも広告主としては無責任です。そのデータの具体的かつ正確な詳細を生活者が閲覧できる手段も明確にするのが、顧客である生活者に対する誠意というものではないでしょうか。
以上の2つの例にも関連しますが、私は常々、多々ある健康関連商品の中で、医薬品は、疾病の診断、治療または予防に関する「プロ」であってしかるべきであり、その点において、他の商品(健康食品、サプリメントなど)と差別化されるべきだと思っています。そのためには、医薬品広告において、試験研究データの利用も含め、医薬品が品質、有効性、安全性についての厳しい基準をクリアして製造販売されていることをアピールすることが、今まで以上に許されてもよいのではないかと思います。もちろん、その内容が行き過ぎたものとなり、かえって医薬品の信頼を失墜させるものであっては逆効果ですので、節度を保つための一定のルールは必要ですが・・・。
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