日本一般用医薬品連合会 - 一般用医薬品業界の連携を強化し、様々な課題について取り組みを進めます。

　今回の審査対象期間は、1月18日～3月11日までに放映されたCMが対象でした。審査日は東日本震災後の4月11日でした。現実には多くのCMの放映が自粛されている中で、審査のために見るCMはとても平和に思われるものでした。テレビから流れるCM、あたりまえに思っていたことが、あたりまえでない日々。それが私の中に、大きな影を与えている現実を、審査のために流れる映像を見ながら考えていました。
審査内容について、話題として取り上げられたものや議論されたものとして印象に残ったものを以下に紹介しておきます。
「飲んで続ける、ハイチオールB」これは、いつまで続けるのか……。ニキビの予防にとられるのでは。「一ヶ月服用して症状が改善しない場合には服用をやめて……」といった注意書きが入るとよいのではといった意見がありました。セルフメディケーションの限界を伝えることも大切なことだと思います。
「うれしい価格で新発売なのに」というトランシーノのCM。新発売というのは、いったいどういった場合に使用できるのか。瓶の商品がPTP包装になり、価格も下がったので「新発売」という表現を使用したとのことでした。「新発売」一般に生活者はこの言葉からどのような印象を受けるのでしょうか。そこから思い浮かべるのは、人様々に思えます。私の場合は、新成分など薬そのものに変更があった場合が浮かびますが……。もちろん、携帯に便利なPTP包装が新発売といわれれば、成分のことなど考えないのですが……。しかし、そのような解説を入れていては価格が下がったことが強調されなくなってしまうのかしら？？？　CM作りの大変さを感じたりしておりました。
「スカイナーAL錠」画面には新発売の文字。商品名が変更になり、新しく申請し承認されたものであるから、新発売としてOKとのこと。うーん！新発売のとらえ方は難しい。
「疲れた筋肉のケアは、痛みを感じるその前に」というエアーサロンパスジェットαのCM。予防的にとられるのではとの意見がありましたが、筋肉疲労の効能があるのでこの表現は、許容されるのではということになりました。痛みは、強くなってからではなく、できるだけ痛みが少ないいときに使用するのが賢い使用方法。歯科でも抜歯前に鎮痛剤を使用する、先行鎮痛が行われています。「痛くなる前・痛み始めに鎮痛薬を使うとよく効く」この先行鎮痛には反論もあり、見解は分かれる所ですが、先行鎮痛は効果があるように思っています。痛み始めに、あるいは確実に痛みがくることが予測される場合は、やはり使用したほうがよいのではと思います。痛みはできるだけ我慢する方が良いと考えている生活者が多くいらっしゃる現状を考えると、このようなCM表現、私としては歓迎です。

　ところで、石巻の避難所に行ってきました。避難所ごとに管理者になっている人も、環境も、システムもそして待遇も大きく異なっているため何とも言えませんが、少なくとも私が、行った所ではOTC薬は、うまく活用されているとは決して言えない状況でした。ある避難所では、看護師さんの24時間滞在がなくなる段階で、避難者に必要なOTC薬の希望のアンケートを取り、集計されました。しかし、OTC薬で処置したために対応が遅れると困るといった理由で、避難所にあるOTC薬が、被災者に配布されるのは中止されました。避難所にある総合ビタミン剤。避難所での食事は、決して栄養バランスがとれたものではありません。しかし、粒が大きく、何か問題があったら困るから、それらも配付もされることなく積まれていました。もちろん、個人的にほしいと希望が出されれば、お渡しするとのことでしたが……。要望はないとのこと。
別の避難所では、足のやけどが治らないとの訴え。波にさらわれ、気がついたときには焚き火の前に横たわっていたという70歳過ぎの女性。8人がかりで波から助けられたとのこと。寒さの中、暖を取るための焚き火。それによる低温やけど。いつも包帯をして誰にも見せることなく自分で処置。壊死した皮膚を取り除くことが必要です。皮膚科の受診が必要です。こむら返りなど足がつることを訴える方も多いようです。ミネラルバランスが問題なのでしょう。こむら返りの対応については、芍薬甘草湯が役立つはずですが……。足がつって困るよとの訴えは、何か、お困りのことはありますかの、質問に答えていただき把握できたものでした。
避難所という、一つの組織の中でマスとして対応するとき、何か問題が起こったら……。OTC薬の使用が躊躇される理由です。しかし、一人一人が自己責任の中で、必要なものを要求し、OTC薬やサプリメントが活発に利用されることが必要です。そのためにはセルフメディケーションの基礎教育の必要性を感じずにはいられませんでした。
しかし、OTC薬やサプリメントが避難所まで届けられているのに、それらが活用されていない現状に薬剤師に責任はないのでしょうか。物プラス情報それが薬である。避難所に正しい使用のための情報が、薬剤師や登録販売者から届けられることを願っています。

以上