日本一般用医薬品連合会 - 一般用医薬品業界の連携を強化し、様々な課題について取り組みを進めます。

○中国で見たこと・感じたこと
　9月中旬に10日間の日程で、2つの大学（湖北省・武漢大学と陝西省・西北大学）から集中講義の依頼を受けて中国を訪れた。私自身、中国旅行は2回目であり、1度目は2年前の5月に武漢大学で開催された広告に関する国際コンファランスに報告者の1人として招待を受けてのわずか３日間の武漢滞在であった。その折に親しくなった同大学の新聞伝播学院（ニュース＆ジャーナリズム学部）の先生方からの2年越しの要請を受けての訪問であったが、「せっかく来るならば」ということで、さらに西北大学の国際商学院の友人の教授からの依頼があり、出発の1ヶ月前になって急遽西安市も旅先に加わることになった。時あたかも尖閣諸島における中国漁船の侵犯・衝突事件があり、船長の抑留をめぐって日中両国政府の間に緊張が高まりつつある最中で、家族や大学の同僚からは不安視するアドバイスを受けたりした中での出発であった。
　武漢大学からはなぜか「迎えの人を差し向けるから、広州まで来て欲しい。」という連絡があり、北京や上海経由での武漢訪問ではなく、やや遠回りの感のある飛行機便の利用となったが、後でその理由は、私を快速鉄道（中国の新幹線）に乗せてあげようという友人の教授の配慮であることが分かった。
　今年の春に開通したばかりという広州から武漢までの快速鉄道は、1,000km強の距離を4時間半程度で結ぶというもので、最高時速350km、営業速度が300km前後という日本の新幹線を上回るスピードの鉄道であった。新しいだけに車体も車内もぴかぴかで、2車両に1人位の割合で配置された車内清掃員が乗客の乗り降りのたびに座席や通路を清掃していたことや、乗務員のレベルの高さが印象的であった。線路に直線部分が多いせいなのか、揺れが極めて少なく、320km程度で走行しているときでも通路を何にも掴ることなくゆったりと歩けるのには驚いた。ただ、武漢まで４つか５つあった駅の周辺にはほとんど建物らしきものがなく、「まるで砂漠の真ん中に駅が建っているみたい」という感想を言ったら、武漢大学の迎えの助手の女性が大笑いをしていたが、大都市の郊外に作られた駅周辺の開発・発展の大きな可能性が印象的であった。ちなみに、広州～武漢間の片道運賃は1等が700元（9,000円強）、2等が400元（5,000円強）とのことで、飛行機運賃より若干安めに設定されているようであった。また、2015年までには北京～武漢、成都～武漢、上海～武漢間それぞれ約4時間の快速鉄道網が完成することになっていて、とくに上海～武漢間では最高時速400km強、営業時速350km程度が予定されているとのことで、わが国でもリニヤー・モーターカーの導入がもっと急がれても良いのではないかと思った次第である。
　武漢滞在予定の6日間のうち、前半の3日間は武漢大学関係者のエスコートを辞退し、『中国語旅行会話帳』と市内地図と度胸だけを頼りにして一人で市内を観光して回った。「何かあったら困るから」という友人の教授などの助言を振り切って、広い市内をタクシーを利用して縦横無尽に（？）歩き回った。学生時代に中国語を学んでおらず、中国語はまったく分からない人間が片言（カタカナ発音）の中国語だけで行動しても、危険や不安を感じるどころか、かえって一般市民（大学生などの若者を含めて）の優しさや親切さを感じたのは、マスコミ報道などから得ていた中国に対する印象とはまったく逆であった。とくに、夜間に何度も一人でタクシーに乗ったが、明らかに日本人と分かる上に中国語がまったく通じない筆者に対して、不安を感じさせるような言動がまったくなかったどころか、日本のタクシーの運転手さん以上に親切な対応をすることがあったことにも驚かされた。
　マスコミ報道との対比的なエピソードを1つご紹介させていただきたいと思う。
　それは、9月18日に西北大学の国際商学院のビジネススクールで社会人院生を対象に講義をしていたときのことであった。午前9時から始まった講義がちょうど10時になったとき、キャンパスの一番端に位置する国際商学院の校舎の外側の、商店が建ち並んだ道路で激しい爆竹のはじける音が続き、爆竹の音が止む間には声高いシュプレヒコールらしき叫び声が聞こえ、その状態が20分ほど続いた。お祭りか何かかと思って通訳の西北大学の日本語専攻の先生に尋ねたところ、嫌々そうに答えてくれたことには、なんと同日は満州事変勃発（中国的な表現をすれば、日本が中国侵略を始めた）79年目の記念日とのことであった。午前10時というのは、奉天郊外の柳条湖で鉄道線路が関東軍によって爆破された同時刻とのことであった。
　高校時代に世界史の授業時間にちょっと聞いたことのある古い事件が現実の問題として目の前に突如出現したのには驚いたが、講義の再開時に「後である質問の時間に、もしも質問があれば、私（亀井）個人の見解を述べさせて頂くことは吝かでない」旨を話したところ、教室にいた30代後半と思われる男性から「国と国との問題と、個人と個人の間の問題とは別です。今日は先生の講義を聴きにここに来たので、私は質問する意志はありません。」という発言があり、周囲の人たち何人もが頷いていたことが印象的であった。私の帰国後、ここ1ヶ月間ほどは中国各地での反日デモの報道が連日マスコミを賑わせているが、マスコミ報道と実際の市民の意識や行動にはかなりの温度差があるようだと感じているのだが、これも中国人得意の接待外交に毒された結果だと言われるかもしれない。
　
○町で見かけた漢方薬（店）のこと
　武漢市内の中心部にある百貨店を見て歩いていたとき、地下の食品を中心とした売り場の真ん中付近に、１階にあった宝飾品売り場以上にはるかに豪華な装飾の売り場構成で漢方薬の売り場があり、向かい合って2軒（内１軒は、香港に本店がある有名な漢方薬局）の店が出店していた。
　ショーケースを覗き込んでみると、縦がやや短いB5版程度の大きさの豪華な木箱に入った「冬虫夏草」に1,000元（13,000円）から5,000元（65,000円）以上の値札が付けられ売られていた。またその脇には、おそらく燕の巣ではないかと思われる白い少し湾曲した掌大のものが8個から10個程度入った箱に、これまた3,000元（45,000円）以上の高価な値札が付けられて売られていた。もっとも、少し色（薄いオード色）が付いた商品もあり、そちらのほうが値段は若干安かったように記憶している。燕の巣が漢方薬店で販売されることがあるのかどうか分からない（中心的な品揃えはその2種類であった！）ので、果たしてそれが燕の巣なのか、それとも別な漢方薬の原料なのかは確信はなく、ご存知の方のご教示をいただければ幸いである。
　その一方で、街中では小規模な薬店が数多く営業しており、その品揃えは日本の薬局などとは比較が出来ないくらい少なく、また店の規模も貧弱であった。漢方薬らしき品物を売っている店舗の方が概して新しいつくりの感じで、活気もあり、中国における大衆薬販売の現状が伺えるような光景であったことをご報告させていただき、審査概評に代えさせていただく次第である。

以上