日本一般用医薬品連合会 - 一般用医薬品業界の連携を強化し、様々な課題について取り組みを進めます。

　3月23日、オバマ大統領が医療保険制度改革法案に署名、アメリカがようやく“国民皆保険”に向けて動き出しました。
　一方、医療費での自己破産も珍しくないと言われるアメリカに比べて、はるかに恵まれている日本ですが、４月７日に日本の健康保険組合連合会が発表したところによると、今年度は全国の健康保険組合の約９割が赤字の見通しで、赤字総額は過去最悪の6605億円に達する予想、とのこと。すでに保険料率が全国平均で前年比１ポイント以上も上がっているにもかかわらず、ですから、いかに厳しい状況かがわかります。
　このようなニュースを聞くにつけ、“セルフメディケーション”への取り組みが、ますます必要かつ重要になっているのだと実感させられるこのごろです。
　
　さて、寒い冬がまだまだ明けぬ2月末、今年1回目の広告審査会が開かれました。
年末年始に放映・掲載されたものが対象だったせいか、目新しい製品はあまりなかったのですが、「またか」という感じで気になった例をいくつかあげます。

①何の薬かわからない
　歌い踊りながら退社していくサラリーマン。ドリンク剤をぐっと一飲み。「それは、肝臓水解物が効く医薬品」というナレーション……。
　たしかに〈滋養強壮、胃腸障害時の栄養補給〉という〈効能・効果〉が画面に出てはきます。しかし、ごく常識的に考えて、これを滋養強壮剤と認識する視聴者はほとんどいないのではないでしょうか。
　わざわざナレーションで流すからには、もちろん作り手は、これが薬のCMだと意識して作っているわけですよね。「肝臓水解物」という一般的にはまだ耳慣れない成分を、ただサラッと提示するだけのやり方は、あまりにも不親切・無自覚に思えてなりませんでした。

②過不足“ある”表現
　「誕生」「次世代成分が効く」とくれば、これはもう「新成分配合の、まったく新しい薬」と思われて当然。スイッチOTCを謳える期間を過ぎた製品となると、かなり誤誘導な要素があると言わざるを得ません。
　その一方で、同シリーズの目薬に関しては「今までの花粉症目薬では、効果を実感できなかった、という人に試してほしい」と提示しながら、「ここぞというときに効く」というあいまい表現で、単なるイメージに終ってしまっている例は、もったいない、という気がしたものです。
　こういう製品は、使用対象者をはっきりさせてこそ意義があると考えますが、いかがでしょうか。
　また、新聞広告においては「ベストセラー」「ベストヒット」という表現で「注意」となった例が複数見受けられました。はっきり申し上げて、これは「禁句」であるという以前に、医薬品にそぐわない表現として強い違和感を持ちました。

③もったいない！
　これまでにも審査会でしばしば議論の対象となった、コレステロールを下げたり、脂肪を落としたりする薬。その甲斐あってか、だいぶ改善されたCMを見ることができました。コンビニ弁当のカロリーを気にする、運動も心がけてはいる、でも、飲み会後ラーメンの誘惑に勝てない……で、流れるテロップが「でも生活習慣はなかなか変えにくい？」。いやあ、もったいない。せっかくここまできたのですから、もう一歩。
飲みさえすればOK、ではなく、あくまでも自己管理を補助する薬ですよ、というところまでもっていってこそ、と思ったことでした。

　結局、医薬品の広告というのは、生命を預かる尊く重大な使命を担っているからこそ要求されるレベルが高くなる、ということにほかなりません。皆様にしてみれば「そんなことは重々わかっていますよ」と思われるかもしれませんが、どんなことでも慣れは慢心につながるもの。広告審査会が、ときどきこの“原点”に返っていただく小さなきっかけとなれば、と願っています。

以上