日本一般用医薬品連合会 - 一般用医薬品業界の連携を強化し、様々な課題について取り組みを進めます。

　今年の６月に改正薬事法が全面施行されてから、まもなく半年が過ぎようとしています。この間に歴史的な政権交代がありましたが、新政権がOTC医薬品の販売制度に関して何か新たな方針を持っているとの報道は目にしていませんので、とりあえずは既定の施策に大きな変更はないことと思われます。
　それにしても、６月の施行前後のマスメディア、特にテレビにおける新販売制度に関する報道は、規制緩和の側面やネット販売の問題ばかりに光を当てた非常に寂しい内容でした。国民のあいだで関心の高い情報と、国民に伝えられるべき情報とは、必ずしも一致しない場合がありますが、日本のマスメディアは視聴率等を追求するあまり、しばしば前者に該当する情報の報道に偏りがちとなってしまい、国民にとって必要な情報を伝えるべき公器としての責務を十分に果たしていないと感じるのは私だけでしょうか？
　これに対して、販売制度改正に伴う医薬品広告における製薬業界の対応を、私は高く評価しています。今回審査対象となったテレビCMの中にも、白衣を着用した薬剤師役のタレントを登場させるなどして、薬剤師から説明を受けて購入することの必要性や、薬剤師等の専門家への相談を促す内容を前面に打ち出した広告が見受けられました。これは、業界関係者のみなさまが、新販売制度に基づく生活者への情報提供の成否が今後のセルフメディケーションの将来を左右するものであることを十分に理解されてのことと思います。今回の制度改正の本旨である「生活者に対する情報提供の充実」が実効を上げなければ、医療用医薬品成分のOTC転用を拡大する道は閉ざされ、OTC業界全体が先細りとなることは確実です。今後も、「医薬品は薬剤師等の専門家に相談して、説明を受けて購入するもの」という意識が生活者の中に広く定着することを目指して、広告においてもそれを支援していただきたいと思います。
　ところで、医薬品広告に医師、薬剤師等の医療関係者（に扮したタレント）を登場させることは効能・効果や安全性の保証につながるおそれがあるため適当でないとされてきましたが、生活者が医薬品の購入に際して薬剤師等の専門家に相談することを促す観点から薬剤師（に扮したタレント）を登場させるのであれば大歓迎です。ただし、その場合でも、広告全体として薬剤師等の専門家が製品の効能・効果や安全性を保証しているかのごとき印象を視聴者に与えないよう留意する必要はありますので、念のため。
　
　また、今回の審査会では、新聞・雑誌の出版社や広告代理店が、ある共通するキャッチコピーに関連する商品を供給している複数の企業に参加を求めて行う共同広告の取扱いが話題となりました。たとえば今回、「日々美しく」といった美容効果に関するキャッチコピーの下に、他社の化粧品とともに複数社の医薬品が並んでいる広告がありました。個々の医薬品の欄には、その医薬品の効能・効果等が正しく記載されており、この部分はそれぞれの医薬品の製造販売業者が作成して出版社または広告代理店に提供したものと思われます。おそらくは、各社から提出されたそれらの原稿をまとめた共同広告に「日々美しく」というキャッチコピーを付けたのは、その広告を企画した出版社または広告代理店であり、製薬企業の広告担当者は、最終的にどのような形の共同広告となるのかには関知していなかったのかもしれません。しかし、結果としてこの共同広告は、適正広告基準の「14　医薬品等の化粧品的もしくは食品的用法又は医療機器の美容器具的若しくは健康器具的用法についての表現の制限」に抵触する広告として、当該共同広告に並んでいた各医薬品のそれぞれの製造販売業者が注意を受けることになりました。
　このような指摘を受けないようにするためには、出版社や広告代理店と共同広告の契約を結ぶに当たり、その共同広告が最終的にどのような形になるのかを十分に確認することが必要です。また、共同広告の制作過程で適正広告基準等に抵触するものになりそうなことが判明した場合は、その修正を求め、修正に応じない場合は広告を取り下げることができるようにしておくことも必要でしょう。すなわち、他社製品との共同広告であっても、その中に自社が提供した医薬品の広告が含まれる以上、製薬企業がその最終形について責任を負わなければならないことにご留意いただきたいと思います。

以上